育休先生。

「イクメン」という言葉がなくなる日を目指して。

できるだけたくさんの人に読んで欲しい!小6が創作した物語。

 昨年度の6年生国語の授業で、「物語を作ろう」という単元を学習したときのこと。子どもからのリクエストでコンクールを開催したところ、ボクが勝手に最優秀作品賞に選んだ女の子の作品が本当に素晴らしかったので、ぜひ読んでください!!

 

<目次>

 

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早速、作品を紹介

 

 「また会おう!!」

 

 

 

 「あぁ、今日もまた同じ海流に乗るのか…。」

ぼくは、おろし。イワシだ。今、イワシ海流の大通り、トルネード通りを泳いでいる。いつも同じところをぐるぐる回っていると、たいくつで仕方ない。

 「ドーンッ!!」

「なんだー!?やるのか?ポン!!」

「今日こそ勝つぞー!!」

はぁ、うるさい二人が来た…。

 

 「お!よう!!おろし〜。」

彼は、シオ。生まれたころからずっと一緒だ。とりあえず直感で進むタイプで、いつも迷惑してる…。

 「シオ兄!!待て〜!!あ、おろし兄!!」

彼女は、ポン。人なつっこい性格だから、いつも誰かといる。まぁ、ぼくたちといることが多いかな。

 「なぁ、たいくつだしよ、オレらで海流からぬけ出そうぜ!!」

何を言い出すかと思えば、バカなことを…。

「いいね!それ!!行こ!おろし兄!!」

ポンまでこんなことを言い出した。

「ぼくはそんなバカみたいなこと、イヤだぞ!!」

「よーし行くぞー!!」

「お〜!!」

「あっ!ちょっと待てー!!」

 

 ぼくたちは、海流を飛び出してしまった。最後尾にいたから、ほかの魚は気付いていなかった。海流以外のところに行くのは初めてだから、二人とも大興奮。もう、無理だ…。

「どうして君たちは、いつもいつもこんなことをするんだ!!」

「いいじゃんねー!!シオ兄!!」

「うんうん。ちょびっとだけだし!!」

 二人を止めることは、もうできない。そんな時、前方に光る物を見つけた。ぼくたちは、気になって近づいた。しかし、それは…。

「なぁ、あのキバと背びれに光る目。まさかあの有名な…。」

「う、うん。サ、サ、サメだよ!シオ兄!!」

「にげろ!!」

「キャー!!」

 

 ぼくたちは、必死に逃げた。でも、いつまでも後を追ってくるサメ。

「だから言ったんだ!イヤだって!!」

ぼくらはつかれて、泳ぐのをやめてしまった。後ろには、サメが……いない!?

「あ、おろし兄…前!!」

「ウ、ウワー!!」

死ぬ覚悟をした。そのとき!!

 

 「やあ!!ぼくは、フーカ!君たちは?」

ぼくたちは、口をぽかーんと開けたまま、止まった。

「よう!!オレは、シオだ!!」

「私、ポン!!よろしくねー!!」

「君は?」

「ぼ、ぼ、ぼくは、お、お、おろしで、です。」

 二人が初めてうらやましく思えた。あの巨体を相手に、友達と話すかのようにしゃべっている。

「シオたちは、何してるのー?」

「オレらは、たいくつだから海流をぬけ出してきたんだよ!!」

(べらべらとしゃべって…。)

「そうなんだー!!ぼく、良いところを知ってるから一緒に行くよ!!」

「お!良いところかぁ〜。うん、一緒に行こう!!」

「レッツゴー!!」

(う、うそだろー!!!)

 

 

 

 海流を飛び出して、2時間が経つ。ぼくは、フーカと近くで話せるようになった。また一人友達が増えたことに、ぼくたちは喜んでいた。

 「うん?温度が変わったな。」

シオが気付いた。そして、フーカはおびえながら言った。

「こ、これは、スッポン海流!!」

「スッポンなんていないのに?」

「ポン!これはスッポンとはまったく関係なくて、人間界へ続く海流なんだよ!!」

ぼくが教えると、みんなはすぐに海流から出ようとした。でも、強い海流にぼくたち、そして、サメのフーカまでも出られなかったんだ。

 

 

 

 「うー!!今日も良い天気!!海は良いなー。」

「うわ〜〜。」

「なんだ?海の中から何か聞こえる…。」

「プハッ!!」

「魚とサメー!?しゃ、しゃ、しゃべってる!」

「に、に、人間〜〜!?」

 ぼくたちは、人間がこわかった。すると人間は、透明の箱の中に海水を入れ、ぼくたちをその箱の中に入れたんだ!!

「フーカ!助けて!助けて〜!!」

「あ!!ポン!シオ!おろし〜!!なんでおれだけ箱に入れねぇんだ?そうじゃなくて!!どうしよう!どうしよう!」

 人間は、ぼくたちを持って海をはなれた。着いたところは、どうやら人間の家だ。ぼくたちは、食べられる。そう思っていた。すると、

「ジャックー!!帰ったら手洗いしなさい。」

「うん!ママ!」

あの人間は、ジャックというらしい。はぁ、こんな旅、出なきゃ良かった。

 

 

 

 3日が経った。ぼくたちとフーカは、ジャックになついていた。もう、友達同然だ。どうしてかって?それは、ジャックが毎日、ぼくたちにごはんをくれたから。とってもおいしいんだ!!フーカにもあげてるんだって!!それに、ぼくたちの良き相談相手になってくれる。

「ぼく、最近太ったんだー。」

「フーカはそのままで良いと思うよ!!」

「本当!?」

 ポンは、

「最近ねむれないのー。」

「いっぱい遊んだら、きっとねむくなるよ!」

「うん!分かった!!」

 シオも、

「最近、オレのオーラが失われてるように感じんだー。」

「ううん!!そんなことないよ!とってもキラキラしてるよ!!」

「さすがジャック!!」

 ぼくも、

「ポンやシオはいつもそうなんだ!!」

「大変だね!!」

「そうなんだよー!!」

みんなジャックが大好きだった。でも、幸せは長くは続かなかった。

 

 

 

 2週間が経った、ある日のこと。ポンが泣き始めた。

「テリーに会いたいよー。」

テリーとは、お母さんやお父さんがいないぼくたちのめんどうを見てくれている人だ。正直、こわい。でも、やさしいところもあるんだ。ポンは、まだ3才。どうしよう。

 そんな時、ぼくたちの前に、ジャックと女の人が立った。

「なぁに?これ?」

「海で見つけたんだ…。」

ジャックは、こまった顔をした。

「ママは魚きらいなの!!今すぐ海に返してちょうだい!!」

「はい。ごめんなさい。」

その人は、去って行った。

 シオがめずらしく、真剣な顔で言った。

「そろそろ、帰ろう。潮時だよ。」

ぼくはいやだった。4人の中で、一番ジャックと仲が良かったからだ。

 ジャックとぼくたちは、話し合った。

「帰る」

これがぼくたちが出した答えだった。

 

 そろそろ帰る時間だ。ぼくは泣いた。そして、ふだんは言わないわがままを言った。

「いやだ!帰りたくない!!」

ジャックは、ぼくにこう言った。

「いつまでも友達だったら、いつでも会えるから!!大人になったらまた来てよ!!」

「また会おう!!」

そう約束して、海に帰ったんだ。

 

 タコツボ交差点。深海サービスエリア。もうそろそろイワシ海流が見えるころ。泣きそうになった。でも、必死にこらえた。フーカが急に言った。

「サメリーマートに行くから、ここでお別れだ!!楽しかったよ!またな!!」

きっと、プライドが高いフーカは、泣き顔を見られたくなかったんだろう。

 トルネード通りに戻ると、テリーがものすごいオーラを放って待っていた。もちろんだが、怒られた。そりゃそうだ。2週間もいなかったんだ。当然だ。でも、泣かなかった。すごい体験をしたからだ!!

 

 ぼくたちは、ずっと友達!!これからもずっと、ずっと!!

 

コンテストの各賞と選評

 このコンクールでは、最優秀作品賞を含めて10個の賞を用意していました。子ども達が、「一人だけ」でも「全員」でもなく「10人ぐらい」が良いと言ったからです。

 各賞は、以下のように設定しました。

 

 ・最優秀作品賞

   総合的に最も優れていた作品に。

 ・タイトル賞

   タイトルの付け方が最も優れていた作品に。

 ・オープニング賞

   書き出しが最も優れていた作品に。

 ・エンディング賞

   終わり方が最も優れていた作品に。

 ・サプライズ展開賞

   予想外のストーリー展開を見せた作品に。

 ・ストーリー構成賞

   ストーリーの構成自体が最も優れていた作品に。

 ・写真DEイメージ賞

   お題の写真から最も上手にイメージできていた作品に。

 ・インパクト一文賞

   最もインパクトのある一文を含んだ作品に。

 ・小説家的スキル賞

   まさに小説家のような表現が使われていた作品に。

 ・ライター間投票賞

   ライター(子ども達30人)の投票によって選ばれた作品に。

 

 そして、それらを学級だよりに選評とともに掲載しました。選評は、あえて本当のコンクールの選評のようにしたら子ども達も喜んでくれるのではないかと思い、以下のような文章にしました。

 

 長編作品ながら、最初から最後まで全く飽きさせない豊かな表現力と、ツルッと読めてしまうのどごしの良さは、素晴らしいの一言。「ぼく」と一人称で語る主人公の ”おろし” と、その兄妹である ”シオ” と ”ポン” のキャラクターが、生き生きと描かれている。

 慎重派である ”おろし” に対して、直感で突き進むタイプの ”シオ” と ”ポン” がいつも ”おろし” を振り回す様子が、海流から抜ける場面やサメのフーカとの出会いの場面などで上手に表現されている。

 また、人間の子ども ”ジャック” との出会いが、ストーリー展開に良いアクセントを与えている。タイトルへと繋がる重要なシーンであり、”おろし” 達の無謀な冒険が大きな意味を持つ瞬間である。

 そして、作者によって意図的に散りばめられた数々のワードによって、読者はあっという間にその世界観へと引き込まれてしまう。トルネード通り、タコツボ交差点、深海サービスエリア。最後にサメの ”フーカ” が立ち寄るのが「サメリーマート」ときたら、その語句選びのセンスに疑いの余地はない。全てにおいて完成度が高く、バランスの良い作品である。

 

 …ご覧の通り、これはボクのお遊びです(笑)。他の賞にも、この調子で選評を付けました。

 

伝わりましたか?

 できることならば、本人の字で書かれたものをそのまま載せたかったです。パソコンで打ち直してしまうと、なかなか良さが伝わらないかもしれません。

 少しだけ、彼女の作品の素晴らしさを3にまとめて紹介させてください。なお、上のレベルを見たらキリがないので、あくまでもボクの勤務する小学校内の相対的な評価だとお断りしておきます。

 

 ①巧みな言葉選びが生み出す世界観

 ②筋の通ったストーリー展開

 ③一人称で語りを進める躍動感

 

 もしかしたら、こちらをご覧の 大人 の皆さんは「6年生やったら、これぐらい書けるんちゃうん?」と思われるかもしれません。

 

 それが、違うんです!!

 

 ここまで全体を通して一貫した世界観があって、違和感のないストーリーを生き生きと描ける子は、クラスに ”片手” ほどもいませんでした

 

 また、全員の物語を添削すると、人によっては『直し』だらけで真っ赤になることもあります。しかし、彼女の場合は僅かにあった誤字・脱字を直した程度で、最初からほとんど手を付ける必要がありませんでした。それもまた、すごいところでした。

 

 せっかくの、これだけの力作です。眠らせておくのがもったいなすぎるので、是非少しでも多くの人に見て頂きたいです☆